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60年の歴史 第5章

第3節 初の海外拠点、松村精型(大連)有限公司の建設

李成勲氏と大連進出

錦州市からのオファー以後、三菱自動車GDIエンジンの開発、韓国大宇自動車向けのL6エンジン、L4エンジンの開発、鋳造用金型の設計から試作までの一貫生産ライン構築など他社にまねのできない付加価値の高い技術力を構築しながら、浩史社長は中国における自動車メーカーの事業展開をうかがっていた。

当社が中国に目を向けたのは、金型に占める設計費用のコストダウンが目的だった。金型全体のコストに占める設計費用は40〜50%。ほとんどが人件費だから、これを海外に移転すれば10〜15%のコストダウンが可能になる。1998年(平成10)10月に富山・大連便が就航しており、富山からは2時間余りと、中国は距離的にも時間的にも近くなっていた。当時大阪技研をとおして取引があった韓国とも陸続きである。

そうしたなか、99年8月10日から13日にかけて日本貿易振興機構ジェトロ富山事務所ならびに富山県が主催するミッションが、大連のヒルトンホテル(現、大連日航飯店)で行われ、当社も参加した。ここで浩史社長が出会ったのが、商社・大連保税区海勲貿易有限公司総経理(代表取締役社長)の李成勲氏である。当社の大連進出については、李成勲氏一族の助力なしには語れない。

李氏は、ミッションに大連貿易促進会の会員の一人として出席していた。浩史社長が出会った当時はすでに海勲貿易を立ち上げて東北民族学院のキャンパス内にある賓館(ビジネスセンター)にオフィスを構えていたが、会社を興すまでは、日本の株式会社林ロストワックス工業(新潟県柏崎市)が大連に創設した大連(林)精密鋳造有限公司で部長の職にあった。したがって、鋳造については豊富な知識を持っていた。大連(林)は、満州帝国時代に日本の教育を受けて育った李氏の父俊杓氏が、ハルピン大学教授だった89年に大連に誘致したもので、息子共々家族ぐるみで支援していた。

李成勲氏は、技術レベルの高い企業との取引を目的にミッションに来場したもので、浩史社長の帰国後も、知人を介して山東省煙台市開発局の要人を社長に紹介するなど、熱心に中国への進出を勧めた。さらに、NEAR2002に参加して来富、当社を訪れて「コンピュータ化が進み、高い技術力を目のあたりにし、ぜひに」と、改めて中国進出を進言した。李氏の熱心で真摯な勧誘に、浩史社長も設計会社のサーベイを依頼するなどして合弁による進出の可能性を探った。

当社のなかで大連における設計会社設立が決定的になったのは、李氏が経営する海勲貿易に発注した部品の品質だった。前述したように当社は2001年から金型製造に流れ作業システムを導入する「WITシステム」に取り組んだが、これに伴う機械加工用の部品を同社に発注したのである。これを李氏は、瀋陽の604研究所(中国の航空エンジン研究所)に発注して製造、当社に届いた部品の品質は高い技術力による確かなものだった。国内の自動車生産が共通化によって絞り込まれるなか、中国市場は発展の可能性を秘めている。浩史社長の設計会社設立の決意は固まった。

海勲貿易総経理李成勲氏

元ハルピン大学教授李俊杓氏

中国における外国資本の企業形態は、独資、合弁、合作の三つである。独資は、100%外国資本の会社で、安価な労働力や中国国内に進出した外資企業への供給、輸出加工などを目的として投資する企業に多い。合弁は外国企業と中国企業とが共同出資して設立する形態で、希少な原料を中国に求めたり、マーケットを中国国内に求める場合に多い。日本の技術をもって中国の安価な労働力を使って製造し、中国企業の販路で販売するのである。さらに、合作は外国企業と中国企業が共同出資して設立した企業体で、取り決めた期間内ですべてを契約で決める。合作の場合は、利益配分が必ずしも出資比率にリンクせず、日本企業による例は少ない。

当社の場合は安価な労働力が目的ではあったが、李俊杓氏の「合弁が必ずしも成功を収めず、うまくいっている例が少ない」という助言もあって、独資による会社設立を採った。浩史社長に「独立資本のほうが身軽で、日本に軸足を置いていつでも引ける」という思いがあったことも否めない。大連を選んだのは、なによりも会社設立に関する手続きのすべてや従業員の労務管理などで李成勲氏一族の助けが得られることが大きかった。李氏は、当社とフロアを共同で賃借し、子会社設立から従業員確保、その教育まですべてにあらゆる助力を惜しまなかった。浩史社長は、北日本新聞の県西部経済人リレーエッセー「晴雨悠々」(2007年6月15日付)に次のような一文を寄せて、李氏一家への信頼を綴っている。

(前略)私には知り合って8年になる中国の友人がいる。彼が日本語に堪能で言葉の壁がなかったこともあって、常にコミュニケーションを図り、仕事だけでなく家族ぐるみの交流をするまで互いに絆を深め合うことができた。

中国での事業展開に今も慎重な私に対し、彼は常に積極的な考えで現地の今後の見通しや、事業へのアドバイスをしてくれている。そもそも中国に進出し、大連で工場を建設できたのも彼のおかげである。

そんな個人の関係が、ひいては国同士の共存共栄にも役立つものと信じている。

NEAR

 

富山県が日本貿易振興会などとの連携で実施している環日本海諸国との貿易・投資等の経済交流促進する北東アジア経済交流EXPO。

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